- USB PD充電器の購入時に使えるチェック項目を考えた!
- 実用面ではポート数・最大出力・急速充電に注目!
- 技術面ではUSB-IFの規格に違反していないか注目!
混沌としているUSB PD界隈。
仕様のせいなのか、USB PD充電器というのは“当たり外れ”が激しい。そこで、USB PD充電器購入時に抑えておきたいポイントを、備忘録としてまとめておきました。
いろんな人に知ってほしいから、
- 実用編(あまり気にせず使いたい人向け)
- 技術編(規格違反に敏感な人向け)
という2つのセクションに分けて話していくよー!
混沌としているからこそ、理解すべきかもしれませんわね。
USB Type-C自体が一般的になっているわけやもんね。
Contents
実用編:購入時に抑えておきたいポイント
項目 | 概要 |
最大出力 | USB充電器自体の最大W数は要確認 |
USBポート数 | 合計ポート数・1ポートあたりの最大出力に注目 |
急速充電規格 | Quick Charge等に対応しているかに注目 |
保護回路 | 適切な過充電・過電流・過熱・回路保護が搭載されているとマル |
USB PD充電器購入時に知っておくべき基本的な項目。
最大出力
充電したいデバイスの必要W数と充電器の最大W数を要チェック。
ひとくちにUSB充電器と言っても、その充電器が供給できる最大出力(W)は異なってきます。なので、購入前にそのUSB充電器が最大何W出せるかというのは、かならず確認しておきましょう。これが初歩の初歩になります。
特に、USB PDという規格で充電するデバイスについては、充電器によっては出力される電力が足らず、デバイスへの充電ができないものもあります。ですので、USB PDで充電するパソコンやタブレットの充電目的で購入する場合はさらに注意が必要です。スマホならば、そこまで気にする必要はありません。
製品名 | 必要電力(W) |
iPad Pro | 18W |
MacBook | 30W |
MacBook Air | 30W |
MacBook Pro 13″ | 61W |
MacBook Pro 15″ | 87W |
MacBook Pro 16″ | 96W |
Surface Pro 7 | 65W |
Surface Laptop 3 13.5″ | 65W |
Surface Laptop 3 15″ | 65W |
Surface Book 2 15″ | 102W |
XPS 15 2-in-1 | 130W |
※上記の電力量に満たない場合でも、デバイスの充電が可能な場合もあります。
USBポート数
USBが合計何ポートあるのか、USB 1ポートあたりの最大出力も要チェック。
USB充電器も千差万別。1ポートしかUSBがない充電器もあれば、4ポートもUSBがある充電器も。そして、Type-A形状とType-C形状という、異なった2種の端子形状もあります。なので、自分が必要だと思うUSBポート数や端子形状がある充電器を選びましょう。
また、ちょっとややこしいのが、USBポートによって最大出力が異なるということ。
特に急速充電規格に対応していない場合は、5W〜10W。USB PD対応なら最大100W。Quick Chargeは10W〜100W。と、かなりバラバラ。ですので、購入前にまずは自分が欲しいUSB充電器のスペックを、パッケージや公式サイトで確認するようにしましょう。
分からないときは公式サイトを見る。これが重要あーるっ!
急速充電規格
Quick Charge等の急速充電規格に対応しているかをチェック。
分からないなら気にしなくてもOKだけど、知っておくと便利なのが、『Quick Charge』を筆頭とした急速充電規格。
深堀りすると大変なのですが、もし使っているスマートフォンのSoC(CPU)が『Snapdragon』というものだったら、Quick Charge対応充電器を検討する……くらいでいいと思います。もし、分からないなら避けても大丈夫。
保護回路
過充電防止機能・過電流防止・過熱保護機能などが搭載されているかチェック。
実用編の最後は、USB充電器に過充電防止機能などの保護機能が入っているかどうか。とはいえ、著名メーカー製のUSB充電器には、この手の保護機能は基本的に入っています。
ただ、当然ながら保護回路のクオリティーはメーカーによってさまざま。気になる人は、購入前にパッケージや公式サイトに記載されている保護回路機能についてチェックしてみるとよいかもしれません。
技術編:購入時に知っておくと便利なポイント
項目 | 概要 | |
重要 | Vbus Hot | 接続確認前にVbusに電圧がかかっていてはいけない |
Bridged CCs | CC1・CC2が短絡してRpプルアップされているといけない | |
PDO | USB-IFが定めるパワールールに準拠していない | |
急速充電規格 | USB Type-C・USB PD以外の充電方式を用いてはいけない | |
PSE | 特定電気用品として適切な検査を行っていない | |
推奨 | Split PDO | 数秒後に別のPDOを通知している場合要注意 |
USB-IF | Certified USB Charger Program認証済である | |
PPS | ダイレクトチャージに対応している |
USB PD充電器購入時に気にしておきたい技術的な項目。
Vbus Hot
デバイスへ接続確認前にVbusに電圧がかかっているUSB Type-Cポート搭載充電器は避けるべき。
USB PD(『USB Type-C Current』含む)では、シンク(デバイス)の接続を確認してからソース(充電器)のVbus(電源供給線)に電圧をかけることに仕様上なっています。なので、接続確認前からVbusに電圧がかかっているUSB Type-Cポート搭載充電器は規格違反になるわけです。これが『Vbus Hot』と呼ばれる現象です。
Vbus HotになってしまっているUSB Type-Cポート搭載充電器は、シンクを故障させてしまう原因になりかねないので、使わないようにするのがベターです。
問題は買ってからでないとVbus Hotが分からないんだよね…。
Bridged CCs
USB Type-Cの通信に用いるCC1・CC2が短絡してRpプルアップされているUSB Type-Cポート搭載充電器は避けるべき。
USB Type-Cポートを使った充電には『ネゴシエーション』(給電前の給電側と受電側で特定の通信)で用いる、CC1・CC2というピンがあるのですが、このCC1・CC2が短絡してRpプルアップしているものは規格違反になっています。この現象を『Bridged CCs』と呼びます。
ここが短絡してしまっているUSB充電器は、5A対応のUSB-C to USB-C ケーブル(E-Markedケーブル)を使用したときに、不具合が起こる可能性があります。最悪の場合、接続したシンク(デバイス)が故障する場合も…。とにかく厄介なのが、このBridged CCsです。
これも買ってからじゃないと分からないんだよね……。
PDO
USB-IFが定めるパワールールに準拠していないUSB PD充電器は避けるべき。
USB PDには『パワールール』という、USB PD対応のソース(充電器)とシンク(デバイス)の間での相互運用性を確保するために、守らなければならない規格が存在します。そして、どのようなパワールールが提供できるかを示した『PDO(Power Data Object)』というデータメッセージがUSB PD対応充電器には存在します。
とどのつまり、USB-IFが定めるUSB PDのパワールールから外れるUSB PD充電器は規格違反になるというわけです。なので、購入前にパッケージやメーカーサイトで、当該充電器が出力可能なW数・A数・V数に目を通しておきましょう。
PDP(W) | 電圧(V) | |||
5V | 9V | 15V | 20V | |
0.5W<X≦15W | PDP/5A | ※ | ※ | ※ |
15W<X≦27W | 3A | PDP/9A | ※ | ※ |
27W<X≦45W | 3A | 3A | PDP/15A | ※ |
45W<X≦100W | 3A | 3A | 3A | PDP/20A¹ |
X=100W | 3A | 3A | 3A | 5A¹ |
※:オプション
¹5A出力にはE-Markedケーブル必須。
USB PD Rev. 3.0では、上記のパワールールに基づいて計算されます。12V出力はオプションのパワールール。
PDP | 電圧(V)・電流(A) | 備考 |
10W | 5V・2A | この場合は2Aでも可 |
15W | 5V・3A | - |
18W | 5V・3A 9V・2A |
この場合は2Aでも可 |
30W | 5V・3A 9V・3A 12V・2.5A 15V・2A |
この場合は2Aでも可 12V・2.5Aはオプション |
60W | 5V・3A 9V・3A 15V・3A 20V・3A |
- |
80W | 5V・3A 9V・3A 15V・3A 20V・4A |
この場合は4Aでも可 |
100W | 5V・3A 9V・3A 15V・3A 20V・3A 20V・5A |
- |
3Aを超える出力は、PDPが60W以上・20V出力の場合のみ規格上許されています。
急速充電規格
USB Type-Cポートでの充電に、USB Type-C Current・USB PD以外の充電方式も用いている充電器は避けるべき。(一部例外アリ)
USB Type-Cポートから出力が許されている充電プロトコルは、USB Type-C標準の『USB Type-C Current』と『USB PD』のみです。つまり、USB PD以外の方法を用いた急速充電規格(Quick Charge等)を搭載しているUSB PD充電器は規格違反(PD以外の方法でVbusを5Vから昇圧してはいけないため)ということになります。
ただし、『Quick Charge 4』と『Quick Charge 4+』だけは機能的に互換が取られているので、規格云々はさておくとセーフ。(ただし、QC 4+については、厳密にはUSB-IFの認証が受けられない。 QC 4 ≒ QC 4+ )
PSE
特定電気用品として適切な検査を行っておらず、菱形PSEマークがないのは電気用品安全法違反なので危険。
USB充電器は電気用品安全法により、菱形PSEマークの付与が義務づけられています。また、マークをつければよいだけではなく、経済産業省に登録された登録検査機関の技術基準適合性検査を販売までに受けなければなりません。
当然だけど、PSEマークの有無は要チェックっ!
Split PDO
数秒後に別のPDOを通知している場合は、シンクとの相性問題に要注意。
USB PD充電器によっては、初回に通知されるPDOから数秒遅れで別のPDOが通知されるという『Split PDO』というものがあります。
Split PDOで通知されたPDOがパワールールから外れているものでない場合、特段問題はないのですが、接続するシンク(デバイス)によっては充電できない場合もあります。なので、禁忌ではないけれども、相性が出やすいUSB PD充電器と思っておくべきでしょう。
USB-IF
Certified USB Charger Programの認証を受けており、製品やパッケージにUSB-IFチャージャーロゴがあると良い。
USB PD充電器の中には、しっかりとCertified USB Charger Program認証済の製品もあります。認証済みの充電器には、上画像のようなロゴが付与されています。購入時にこのロゴがあると、かなり安心できる充電器であると言えます。
USB-IF認証のUSB PD充電器を率先して選びたいところっ!(でも、認証済の充電器は少ない)
PPS
バッテリー充電方式は『ダイレクトチャージ』に対応しているとなお良い。
USB PD Rev. 3.0 Ver. 1.1で新規に追加された機能として、Sink Directed Charging(ダイレクトチャージ)である『PPS』があります。
このPPSとは、従来の充電方式よりも高効率で低発熱な充電方式で、一般的にはダイレクトチャージと呼ばれています。今後、このPPSはUSB PDにおける急速充電機能のひとつになってくるはずなので、PPS対応だとなお良いと思っておきましょう。
PPSにもパワールールがあって……。
わっ!?またややこしい予感がするやんね。
図解でのUSB PD充電器の選び方総括
最後に、今までお話してきたUSB PD充電器の選び方について、上画像のような図解シートを作ってみました。これを購入時の参考にどうぞ。
まとめ「USB PD充電器はとにかく注意点だらけ」
かなり長くなってしまいましたが、USB PD充電器を購入するときに抑えておきたいポイントをひととおりチェックしていきました。うーん、かなり大変……。
ひとつ言えるとするならば、購入前にメーカー公式サイトやパッケージでスペックを確認したり、レビューを参考にしてみるとよいかもしれません。それくらい、まだまだ混沌としているということなのです。
こうなると、USB Type-Cケーブルも気になるところ……。
おまけ
便利で柔軟な規格だからこそ、起こってしまうカオスって感じなんだよねー。
汎用性が高いぶん、製品クオリティーもバラツキが出てしまうものですからね。
消費者にとっては、便利なようなそうでないような…やね。
おわり
Reference: 電気用品安全法 - 経済産業省, Universal Serial Bus Type-C Cable and Connector Specification, 第812回:Quick Charge 4/Quick Charge 4+とは - ケータイ Watch