コラム

任天堂コントローラーの歴史・ゲームとUIの相関性の考察 –据置型編–

任天堂コントローラーの歴史・ゲームとUIの相関性の考察 –据置型編–

記事のポイント

  • 任天堂のコントローラー史を振り返る!
  • UIの観点からコントローラーを見てみる!
  • 任天堂はエクスペリエンスを重視している!

コントローラー史をドット絵で。

ファミコンから始まる、任天堂のコントローラーの歴史を振り返ります。そして、コントローラーのUIから見る、ゲームとの相関性、エクスペリエンスについて考察してみました。

まの

任天堂の歴史は、ゲームコントローラーの歴史でもあると思うのです。

二条ねこ

任天堂のコントローラーって、他社に比べて凄い変化してるもんねー!

砂瀧えり

振り返って見えてくるものもあるもんね!

任天堂ゲームコントローラーの変遷

まずは、『ファミリーコンピュータ』から『Nintendo Switch』までのゲームコントローラーの歴史を、簡単なタイムラインにしてみました。

  • 1983年
    ファミリーコンピュータ
    ファミリーコンピュータのコントローラー。

    ファミリーコンピュータは1983年生まれ。

    ファミコンのコントローラーといえば、任天堂の大発明である『十字キー』を世の中に知らしめた立役者。そして、IコンとIIコンで存在するボタンが違うという、今考えたらトンデモな仕様でした。

  • 1990年
    スーパーファミコン
    スーパーファミコンのコントローラー。

    スーパーファミコンは1990年生まれ。

    スーファミのコントローラーで初登場なのが、X/Yボタン・L/Rボタンの2種類。かなりボタン数が増えましたが、これは同社の『スーパーマリオワールド』でヨッシーの上に乗るために搭載されたとかとか…。

  • 1996年
    NINTENDO64
    NINTENDO64のコントローラー。

    NINTENDO64は1996年生まれ。

    N64のコントローラーを語る上で外せないのが『3Dスティック』というアナログスティック。この3Dスティック、ジョイスティックのようなボリューム式ではなく、マウスに採用されている光学式だったりします。

  • 2001年
    ニンテンドーゲームキューブ
    ニンテンドーゲームキューブのコントローラー。

    ニンテンドーゲームキューブは2001年生まれ。

    GCのコントローラーは、A/Bボタンのサイズが同じではない稀有な存在。ここでようやく、アナログスティックが2つになりました。なお、メインのアナログ入力の呼び名は3Dスティックではなく、『コントロールスティック』に変更されています。

  • 2006年
    Wii
    Wiiのコントローラー。

    Wiiは2006年生まれ。

    Wiiにはコントローラーが数種類ありますが、メインは『Wiiリモコン』です。スピーカー・加速度センサーが採用されたのも当時話題でした。後からジャイロも追加で搭載。センサーバーとのやり取りは赤外線ですが、ゲーム機本体とはBluetoothで接続して通信しています。

  • 2012年
    Wii U
    Wii Uのコントローラー。

    Wii Uは2012年生まれ。

    Wii Uもコントローラーはいろいろですが、メインは『Wii U GamePad』です。従来のコントローラーにタッチ対応ディスプレイがついているという斜め上発想。ちなみに、コントローラーへの映像転送はカスタムされたMiracastを用いているそう。ちゃっかり、NFCもついています。

  • 2017年
    Nintendo Switch
    Nintendo Switchのコントローラー。

    Nintendo Switchは2017年生まれ。

    Switchのコントローラーである『Joy-Con』は、ご存知のとおり、本体にドッキングされた状態が基本形。見た目が飛び道具的ですが、HD振動・モーションIRカメラ・NFC・加速度センサー・ジャイロセンサーが搭載されている技術の結晶のようなコントローラー。

二条ねこ

この任天堂のコントローラーのドット絵は、ねこちゃんたちが作ったオリジナルなのであーるっ!

簡単に任天堂ゲームコントローラーの歴史を振り返ったつもりでしたが、意外とボリュームが多くなってしまいました…。

携帯機のコントローラー史もあるでよ

任天堂コントローラーの歴史・ゲームとUIの相関性の考察 –携帯型編–
任天堂コントローラーの歴史・ゲームとUIの相関性の考察 –携帯型編– すべてはここから始まった——。 1989年発売『ゲームボーイ』から、2019年発売『Nintendo Switch Lite』まで...

流行ゲームから見る任天堂コントローラーのUI

任天堂コントローラーの歴史をサクッと知った上で、これらの任天堂のコントローラーを『UI(User Interface)』いう観点で振り返ってみます。

FC時代—ジョイスティックを一蹴した『十字キー』という発明

FC時代—ジョイスティックを一蹴した『十字キー』という発明

ファミコン以前の家庭用ゲーム機は、ジョイスティック型のカーソルが主流でしたが、ファミコンのコントローラーには『十字キー』という今では当たり前のカーソルキーを採用しました。

まの

十字キー自体は、ファミコン発売の前年である1982年で初採用(ゲーム&ウオッチのドンキーコング)されたようですね。

UIとしては8bit機らしくシンプル。上下左右と決定をしっかり押し込めるように作られています。左手で移動(主動作)、右手で決定(副動作)という今でこそ当たり前のUIを体現した初めてのコントローラーだと思っています。まさにコントローラーの歴史を語る上では外せない、マイルストーンのような存在。

まの

このUIを体感するには、やはり『スーパーマリオブラザーズ』がベストですね。

SFC時代—ボタン倍増で複合動作が可能に

SFC時代—ボタン倍増で複合動作が可能に

ファミコンからスーファミになり、コントローラーのボタン数が急増しました。

新たに、『X』・『Y』・『L』・『R』のボタンが設けられ、親指だけでなく人差し指を使うようになりました。つまり、指というインターフェースそのものも、 2本 → 4本 になったのです。

スーファミは16bitを活かしたゲームが多く、レースゲームや格闘ゲームなど、“○○しながら○○する”という複合動作が求められるようになりました。だからこそ、多ボタン化と人差し指を使うL/Rボタンが登場したのでしょう。

まの

このUIを体感するには、マリオもよいのですが、ここでは『F-ZERO』を推しておきます。

N64時代—アナログ入力と所定位置がない“触れる”という体験

N64時代—アナログ入力と所定位置がない“触れる”という体験

N64のコントローラーは、まさに新時代。大きな進化があったコントローラーですが、その中でも『3Dスティック』は外せない要素。

ゲーム自体が64bitになったことにより、グラフィック性能も大幅に向上。それにより、多くのゲームは3D化(ポリゴン化)されました。なので、従来のピクセル単位の縦横移動ではなく、よりアナログ的な移動(斜め移動や移動の速度)が求められるようになりました。このアナログ的な操作を実現したのが、任天堂の大発明『3Dスティック』です。

二条ねこ

このタイミングで、人間工学を意識した形状になっているよねー!

まの

そうですね。
想像ですが、アナログ入力を設けたことによる、手との一体感を重視したのかもしれませんね。

この3Dスティックの登場により、指の感覚がダイレクトにコントローラーに伝わる。つまり、コントローラーが指となった瞬間なのです。これぞエクスペリエンス。UIがUXに変わった魔法の瞬間でしょう。

さらに、この独特な配置により、ゲームによって手のホームポジションが変わるという現象が起こりました。これは要するに、そのゲームによって最適なUIがあるということを表したのではないでしょうか。十字キーがベストなゲームもあれば、3Dスティックがベストなゲームがあるように…。

まの

このUIを体感するには、名作『スーパーマリオ64』と『ポケモンスタジアム金銀』の2ソフトをどうぞです。

GC時代—2つのアナログとボタンに役割が与えられた

GC時代—2つのアナログとボタンに役割が与えられた

GCのコントローラーで、ついにアナログ入力が2つになり、L/Rボタンもアナログ入力(強さを感知)になりました。

このコントローラーは、デザインこそ現在のコントローラーに似ていますが、設計思想は現在のそれとは大きく異なるように感じます。その要因こそ、AボタンとBボタンのサイズが違うということ。

ベーシックなプレステ型のコントローラーは、原則として“左右対称”なデザイン設計です。しかし、このGCコントローラーはアナログ入力(コントロールスティック・Cスティック)も互い違いですし、A/B/X/Y/Zボタンの配置も独特です。一見、変なUIですが、これが個人的にはある種の頂点だと思っています。

その理由とは、ボタンやアナログ入力に固有の役割が与えられたということ。まさに『大乱闘スマッシュブラザーズDX』は、それを如実に表しているゲームソフトのひとつ。万能なユニバーサルなUIではなく、特化した役割型のUIは、よりコントローラーを“第2の手”にしたかったのかもしれません。

まの

このUIを体感するには、やはり『大乱闘スマッシュブラザーズDX』が一番です。

Wii時代—ゲームコントローラーは操作から体験の時代へ

Wii時代—ゲームコントローラーは操作から体験の時代へ

Wiiの時代になると、『Wiiリモコン』・『ヌンチャク』・『クラシックコントローラ』とコントローラーが分裂しだします。

まの

ここでは、主たるコントローラーである『Wiiリモコン』にフォーカスしますね。

今までのゲームコントローラーからすると、かなりトリッキーな外観。増え続ける一方であったボタン数も減り、アナログ入力さえオミットされました。
ただ、その代わりに赤外線センサー(CMOSセンサー)や3軸の加速度センサーが搭載されました。

Wiiがより家族をターゲットにしたこともあり、ゲームを“操作”するというものから、ゲームそのものを“体験”するに変化したから、こういうコントローラーのUI設計思想になったのでしょう。

後期のゲームソフトはクラシックコントローラ頼りな感じがしましたが、初期〜中期のゲームソフトはWiiリモコンを活用したものが多かった印象です。『Wii Sports』や『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』は、まさにコントローラーをエクスペリエンスの時代にしたゲームでしょう。任天堂純正タイトルですから当然ですが…。

まの

このUIを体感するには、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』をプレイするのがよいですわ。

Wii U時代—タッチという新時代のUIが登場

Wii U時代—タッチという新時代のUIが登場

Wii UもWiiの系譜を受け継いでいるので、多様なコントローラーが出ていますが、ここでは『Wii U GamePad』についてを見てみます。

Wii U GamePadは、今までの任天堂コントローラーの集大成的な存在。いわゆる“全部載せ”のコントローラー。歴史上、こんなにモリモリにしたコントローラーはないはず。

十字キーやA/B/X/Yボタンなどのボタン型入力、2つのアナログ入力の要素はもちろん、Wiiで採用された体験型の要素(ジャイロ・加速度)も取り込まれております。そこに、新たにタッチパネルが採用され、“触る”というインターフェースが追加されたのです。

テレビの画面を含め、合計で2画面となったことにより、新たな発想が可能になりました。『スーパーマリオメーカー』や『スプラトゥーン』は、それをフルに活かしたゲームソフトでしょう。(こう考えると、ドリキャスは進みすぎですね…)

まの

このUIを体感するなら、触ることにフォーカスした『スーパーマリオメーカー』とジャイロを使った『スプラトゥーン』がベストですね。

Switch時代—ついにコントローラーは手になった

Switch時代—ついにコントローラーは手になった

そして、Nintendo Switch。

Switchには、本体にドッキングされている『Joy-Con』と、プロコンこと『Nintendo Switch Proコントローラー』がメインでありますが、今回は『Joy-Con』について考えます。

このJoy-Conをどう考察するかは難しい(それくらい多機能)ですが、“操作”という従来型のインターフェースと、コントローラーそのものを“動かす”という新時代のインターフェースを調和させたものだと思います。

WiiやWii Uは、かなり体験型に偏っていたイメージで、旧時代の操作するというUIに関しては若干おざなりな様子でした。操作より体験重視という感じです。それをうまく、操作するUIも両立させたのがJoy-Conというイメージ。

Joy-Conを外せば、体験型のコントローラー。
Joy-Conを付ければ、操作や入力型のコントローラー。

これぞ、Nintendo Switch。名は体を表すとは、まさにこのこと。
このメタモルフォーゼがあったからこそ、操作や入力を重視するコアなゲームもできるし、『1-2-Switch』や『Nintendo Labo』のような体験型のゲームもできるということでしょう。

二条ねこ

こう考えると、コントローラーが外れる意味があるって思うよねー!

まの

ゲームというのは、UIもUXも、そのゲームに応じて最適なものが違うのだと思います。格闘ゲームに向いたコントローラーもあれば、レースゲームに向いたコントローラーもあるようにです。それを1つのコントローラーで両立させたのが、SwitchのJoy-Conだと思っています。

こういうコントローラーなので、このUIをフルに体感するには、さまざまなゲームに触れるほかありません。非常にエポックメイキングであり、考え尽くされたゲームということ。

UIとUXの両立—操作から体験への進化

こうやって、ひとつひとつコントローラーの歴史を振り返ると、非常に面白いことが分かった気がします。

砂瀧えり

それって何なん?

まの

任天堂のコントローラーは、UIよりもUXを重視していて、ゲームを操作するというよりも、ゲームそのものを体感することに重きを置いているということですね。

任天堂のコントローラーの歴史は、UI・UX抜きでは語れない。任天堂のコントローラーの歴史は、UI・UX抜きでは語れない。

任天堂のコントローラーには、

  • ボタン入力(十字キー・A/B/Y/X/Zボタン)
  • アナログ入力(3Dスティック・コントロールスティック・Cスティック)
  • モーション入力(ジャイロ・加速度)
  • タッチ入力(タッチパネル)

という4つの入力要素があり、上から下にいくにつれて、操作型から体験型へのインターフェースになっているように思えます。

ただ、ゲームというのは難しく、体験を重視したからといって、ユーザーが最高のエクスペリエンスを得られるわけではないということです。難しい解釈になってしまいますが、体験とエクスペリエンスは元の意味は同じだが“意図が違う”のです。

だからこそ、コントローラーはUIもUXも両立し、操作も体験もあるとよい。それこそ、コントローラーとしての最高のUIであり、最大限のエクスペリエンスを得られるというものな気がします。

まの

任天堂のゲームコントローラーの歴史は、他社よりも動きが激しいので、よりそれが如実に現れているように思えます。さすがは、世界に誇るゲームのリーディングカンパニーなだけあります。

二条ねこ

ハードもソフトも強いメーカーだからこそ、エクスペリエンスを考えられるって感じだよねー!なんだか、Appleみたいだっ!!

まの

確かに、ハードとソフトを一貫して内作できるところは、似ているところがありますよね。

まとめ「押す・傾ける・振る・触る。そのどれもがUIである」

まとめ「押す・傾ける・振る・触る。そのどれもがUIである」

今回は、任天堂の家庭用ゲーム機のコントローラー史について見てきました。

こうして見ていくと、任天堂のコントローラーの歴史は、ユーザーにより良いエクスペリエンスを得られるように、試行錯誤して創造されていったその足跡だというのが分かります。

また、だからこそ、ゲームコントローラーのUIとゲームソフトには、ある種の相関性があり、技術や人間の欲求が反映され生み出されたのでしょう。その結果が、UIの多様化へと結びついたのかもしれません。

まの

言えるのは、任天堂は一貫してエクスペリエンスを重視したということですね。

二条ねこ

十字キーも3Dスティックも、そのUIの向こう側にはエクスペリエンスがあるってことだもんねー!

なぜ『右ボタン』は各社バラバラなのか?—コントローラーの割り当てで紐解く思想学
なぜ『右ボタン』は各社バラバラなのか?—コントローラーの割り当てで紐解く思想学 コントローラーのボタン学。 ゲームコントローラーの『右ボタン』は、プレイする上で大事なインターフェースのひとつ。そんな右側ボタンで...

この記事で紹介したガジェット

おまけ

まの

かなり語ってしまいました。

砂瀧えり

こうやって、コントローラーを見ていると、感慨深いものがあるやんね!

まの

そうなのですよ。
特にファーストパーティー開発のソフトを見ると、そのゲーム機やコントローラーをどうしたいのかが見えてきますよね。

二条ねこ

うーむ…ゲームの道も一歩からですな〜。

おわり