コラム

USB PD各プロトコルのお勉強—パワールールとパワープロファイル・リビジョンとバージョンについて

USB PD各プロトコルのお勉強—パワールールとパワープロファイル・リビジョンとバージョンについて

記事のポイント

  • USB PDには細かい『リビジョン』と『バージョン』がある!
  • 『パワープロファイル』と『パワールール』ってのもある!
  • 最新規格に沿った仕様の見方をする必要がある!

USB PD 2.0もUSB PD 3.0も最新!?

USBの充電規格『USB PD』を調べていくと、『USB PD 2.0』とか『USB PD 3.0』という単語を耳にするはず。うーん、とってもややこしい…。ということで、改めてUSB PD周りのキーワードと電力供給のお勉強

二条ねこ

USB PDには、『バージョン』『リビジョン』があってだねー。

二条ねこ

しかも、『パワープロファイル』『パワールール』があってだねー。

砂瀧えり

すでにややこしいことこの上ないんやけど…。

はじめに

本題に入る前に、簡単な『USB PD』の仕様をおさらい。
USB PDの電力・電圧・電流についてと、そもそもの電力供給量を算出するための公式について、この2点をまずは振り返ります。

USB PDの基本仕様

USB PDの基本仕様
  • 電力(W):最大100W
  • 電圧(V):5V・9V・(12V)・15V・20V
  • 電流(A):3A・5A

USB PDの基本的な電力供給量の仕様は上記のとおり。
従来のUSBによる電力供給との大きな違いは、電圧が5V固定ではないこと。そして、最大100Wという大きな値を出せるようになったということです。

二条ねこ

とにかく、キモは100W出力ですなー。
あ、12Vが括弧書きな理由は、読み進めていくと分かるのであーるっ。

USB PDとは?—特徴・仕様・ネゴシエーション・注意点を一挙にチェック
USB PDとは?—特徴・仕様・ネゴシエーション・注意点を一挙にチェック USB Type-Cって、ほんとややこしい。 USB Type-Cには『USB PD』という、最大100Wまで電力供給が可能なプロ...

電力供給量算出の公式

電力供給量算出の公式

電力供給量(W) = 電圧(V) × 電流(A)

そもそも電力供給量を算出する方法というのは、非常に簡単で上記のような公式(直流回路の場合・抵抗値は無視)に当てはめることができます。あれです、中学校とかで習うやつですな。

二条ねこ

交流電源だと、三角関数とか微分積分をゴニョゴニョ〜っと!そして、合成インピーダンスの算出を……。

まの

とりあえず、交流電源は置いておきましょう。話が逸れてきますわ。

直流やら交流やらという細かい話はさておき、先程のUSB PDの仕様を電力供給量算出の公式に当てはめると、
100W = 20V × 5A
となるわけです。

砂瀧えり

ただの掛け算の組み合わせなら、めっちゃ簡単な気がするんやけど…!?

二条ねこ

ところがどっこい、そーんな簡単に終わらせてくれないのがUSB PD様(?)なんだよねー。

リビジョンとバージョン

USB PDを調べていくうちに出てくるキーワードとして、

  • リビジョン
  • バージョン

というものがあります。

リビジョンとバージョンの違い

USB PDのリビジョンとバージョンの関係。USB PDのリビジョンとバージョンの関係。

USB PDの『リビジョン(Revision)』『バージョン(Version)』
この2つ世代を示すキーワードの関係性は上記のとおり。リビジョンがメジャーアップデートで、バージョンがマイナーアップデートというイメージ感ですな。てか、その時点でややこしい気が…。

二条ねこ

USB PD 3.0の“3.0”はリビジョンを指してるんだよー!

まの

USB PDのバージョン3.0、ということではないわけですね。

二条ねこ

そゆことですなー。
そこを履き違えると、なかなかに大変なことになってくるかもっ!?

USB PDのリビジョン

USB PDのリビジョン
Revision 発表年 USB端子形状 信号
1.0 2012年 Type-A/B Vbus
2.0 2014年 Type-A/B/C CC(Type-C)
3.0 2016年 Type-C CC

USB PDにおける各リビジョン。

USB PDのリビジョンには、2019年現在3.0まで存在しています。
こうやって見ると、USB PD自体はUSB Type-C以外も想定されていた(実際に使われたかは微妙だが)ようです。時間軸的にも、USB Type-C構想以前から、USB PDの概念はあったというわけです。

二条ねこ

基本的にはリビジョンで区切っていいんだけど、USB PD 2.0だけちょ〜っと、ややこしいんだよねー。

USB PD 2.0の途中で電力供給のルール変更があった。USB PD 2.0の途中で電力供給のルール変更があった。

USB PD 2.0の細かな差異

  • USB PD 2.0 Ver. 1.1まで:パワープロファイル
  • USB PD 2.0 Ver. 1.2から:パワールール¹

¹USB Type-Cに関して。

これから、この『パワープロファイル』と『パワールール』について触れていくのですが、事前に知っておきたいのは『USB Power Delivery Revision 2.0 Version 1.1』を境に、USB PDの電力供給に関するルールが大幅に変わっているということです。当然、現在では『パワールール』が適用されています。

二条ねこ

だから、パワープロファイルに関しては、新旧を区別するために知っておくだけって感じだねー!

パワープロファイルとパワールール

そういうわけで、

  • USB PD 2.0 Version 1.2〜
  • USB PD 3.0 Version 1.0〜

で採用されている『パワールール』と、それ以前まで採用されていた『パワープロファイル』について、それぞれ見ていきます。

パワープロファイル

プロファイル 電力 電圧・電流
Profile 1 10W 5V・2A
Profile 2 18W 5V・2A
12V・1.5A
Profile 3 36W 5V・2A
12V・3A
Profile 4 60W 5V・2A
12V・3A
20V・3A
Profile 5 100W 5V・2A
12V・5A
20V・5A

USB PDのパワープロファイル。

USB Power Delivery Revision 2.0 Version 1.1(USB PD 2.0 Ver. 1.1)まで採用されていた『パワープロファイル』は、上表のとおり。

USB PDのパワープロファイルはすでに古い仕様となっており、現在では使われていません。
おそらく、家電量販店やAmazonで、USB PD充電器を購入してもパワープロファイルが適用されているものはないはず。なので、“こういうのがあった”ということだけ理解しておき、現在では適用されない古い規格ということを頭に入れておくべき。

まの

USB PDにも1.5A出力があったのですね。

二条ねこ

実際に使われたのか微妙だけど、パワープロファイル時代の“12V出力”を使っているUSB PD充電器は結構見かけるんだよねー。

パワールール

W数(PDP) A数(5V) A数(9V) A数(15V) A数(20V)
0.5W以上・15W未満 PDP/5A - - -
15W 3A - - -
15W超過・27W未満 3A PDP/9A - -
27W 3A 3A - -
27W超過・45W未満 3A 3A PDP/15A -
45W 3A 3A 3A -
45W超過・60W 3A 3A 3A PDP/20A
60W 3A 3A 3A 3A
60W超過・100W未満 3A 3A 3A PDP/20A¹
100W 3A 3A 3A 5A¹

USB PDのパワールール。
¹5Aケーブル(eMarker認証チップ搭載)ケーブル利用時のみ。

USB Power Delivery Revision 2.0 Version 1.2(USB PD 2.0 Ver. 1.2)以降に採用されている『パワールール』は、上表のとおり。基本、こっちを見ればOK。

現在、USB PDはこのパワールールに基づいて適用されている。なので、テスターで計測したい場合は、このパワールールに基づいているか否かを判断するべきでしょう。

W数(PDP) A数(3.3V〜5.9V) A数(3.3V〜11V) A数(3.3V〜16V) A数(3.3V〜21V)
0.5W以上・15W未満 PDP/5A - - -
15W 3A - - -
15W超過・27W未満 3A PDP/9A - -
27W - 3A - -
27W超過・45W未満 - 3A PDP/15A -
45W - - 3A -
45W超過・60W - - 3A PDP/20A
60W - - - 3A
60W超過・100W未満 - - - PDP/20A¹
100W - - - 5A¹

USB PDのPPS時のパワールール。
¹5Aケーブル(eMarker認証チップ搭載)ケーブル利用時のみ。

なお、USB 3.0以降は、上表の『PPS』(プログラマブル・パワー・サプライ)がオプションで利用できる。

この『PPS』では、電流を一定にして電圧上昇させたり、電圧を一定にして電流を降下させたりする制御を行っている。
USB PD対応の充電器やモバイルバッテリーのPDOに、『3.3V〜2.9V・3A』のような記載があった場合、当該充電器やモバイルバッテリーは『USB PD 3.0』であるということになるわけです。

USB PD 3.0対応充電器

各USB PD(Rev.・Ver.)の違い

何だかややこしい感じになってきたので、各USB PDのリビジョンとバージョンについて、以下の表にまとめてみました。

  USB PD 1.0 USB PD 2.0
(Ver. 1.1まで)
USB PD 2.0
(Ver. 1.2から)
USB PD 3.0
電源管理 パワープロファイル パワールール
CC -
PPS - - -
FRS - - -

各USB PD(Rev.・Ver.)の規格表。

なお、『FRS』というのは、ファスト・ロール・スワップの略で、瞬時に受電側・給電側の役割(ロール)を切り替えるという機能です。要するに、電力のあげる側ともらう側のRoleをSwapする…って、そのままだった!

二条ねこ

このFRSは、ノートパソコンとかタブレットのUSB Type-Cポート(もち、PD対応)で見かける機能だねっ!

各USB PDの総括

USB PDを時系列と機能でマッピング。USB PDを時系列と機能でマッピング。

今回のお勉強をノート的にまとめると、こーんな感じなはず!

もっと総括的にしちゃうと、

  • USB PD 2.0 Ver. 1.3
  • USB PD 3.0 Ver. 1.2

が現時点では“最新”のUSB PDの規格ということですな。

二条ねこ

だから、パワールールだけ考えればOKってことですな〜♪

まとめ「現行のUSB PDでは『パワールール』だけ気にすればOK」

まとめ「現行のUSB PDでは『パワールール』だけ気にすればOK」

いろいろと調べた結果、現行のUSB PD(USB PD 2.0 Ver. 1.3・USB PD 3.0 Ver. 1.2)では、『パワールール』だけ気にしておけばOKということです。パワープロファイル…そんなの過去のものさ!

あ、USB PD 3.0の場合は、オプションの『PPS』もチェックしておくと良き良きかもですね。

二条ねこ

結論、超ややこしかった!以上っ!!解散っ!!!

この記事で紹介したガジェット

おまけ

二条ねこ

パワープロファイルが“過去のもの”ってことを理解しておかないと、いろいろ混乱してきそうだよねー。

砂瀧えり

出力電圧も違うわけやしね。

まの

実際に使われているか否かは別として、USB端子形状の差異もややこしい気がしますわね。

二条ねこ

事実上、USB PDはUSB Type-C専用って感じだけど、仕様上はAもBもあるのがねー。うーむ……。

おわり

Reference:
USB Charger (USB Power Delivery) - USB-IF, iPhoneに続いてPCの音声端子もなくなる? 知っておきたい2017年の注目技術 - IT Media, USB PDの技術 〜安全と利便性を実現する技術〜 - Renesas Electronics, 【USB】第6回 USB充電を大きく変える新規格、USB PDとは? - @IT