コラム

ポインティングデバイスの呪縛—キーボード+タッチパッドこそ次世代の理想最適解?

ポインティングデバイスの呪縛—キーボード+タッチパッドこそ次世代の理想最適解?

記事のポイント

  • 人類は『マウス』と『キーボード』の呪縛に囚われたまま!
  • ジョブズが提示した『指』デバイスは最適解ではない!
  • 理想はポインティングデバイスをどう落とし込むか!

指は入力デバイスすべてを賄えるか?

スマホ・タブレットの時代になり、『ポインティングデバイス』というものに対し、『指』が主流になった。相対的に『キーボード』や『マウス』のウエイトが下がっている。果たして、それが便利なのか、それが正解なのか、その考察記事。

まの

どういうことですか?

二条ねこ

いやー、指で全部のポインティングをするって無理があるんだよねー。

砂瀧えり

…!?!?

問題:ポインティングデバイスの呪縛

問題:ポインティングデバイスの呪縛

まず、この記事の問題提議というのは、
指がすべてのポインティングデバイスの代替になりえるのか
というタイトルである。

スマホやタブレットが、一般層に普及しきった感のある2019年。いわゆるパソコンにしてもタッチパネルを搭載し、OSもタッチ動作に最適化された。これは『指』というデバイスが1つの市民権を得たという表れなのではないかと筆者は思う。

しかしながら、本当に指が便利なのか。指だけでポインティングデバイスとして賄えるのか。キーボードやタッチパッドの行く末はどうなのか。ポインティングデバイス論としては、『指』というデバイスがポインティングデバイスとしての最適解だという感じはしない。ただただ、永遠とそのポインティングデバイス道(沼)が続いているようにも思える。

——だからこそ、今だからこそ、ポインティングデバイスを改めて考えてみたいと思う。

二条ねこ

そういう壮大(と思っている)なテーマなのであーるっ!

砂瀧えり

学術というか、変態というか…。

まの

ポインティングデバイスマニアですわね。

ポインティングデバイスの種類

  • トラックポイント
  • マウス
  • トラックボール
  • ペンタブレット
  • デジタイザーペン
  • ジョイスティック

容易に思い浮かべることができる『ポインティングデバイス』としては、上記のような種類が挙げられるはずだ。

『トラックポイント』と『トラックボール』。『トラックポイント』と『トラックボール』。

ThinkPadに搭載されている『トラックポイント』や、Kensingtonの『トラックボール』というのは、コアな支持層が多いカテゴリーではあるが、一般的には認知度が低いかもしれない。
イラストレーターには必須の『ペンタブレット』や、ゲーマー御用達の『ジョイスティック』も、一部層に特化されるポインティングデバイスであろう。

結局のところ、古来から存在する“レガシー”な『マウス』が、一番ユーザーにとって親しみのあるポインティングデバイスだと思う。そして、ポインティングデバイスではないが、『キーボード』もセットなイメージだろう。

スティーブ・ジョブズと指デバイス

さて、そんな“物理”なポインティングデバイスが当たり前であった、10数年前。それを一変させたのが、そう、我らがスティーブ・ジョブズ。

「皆が生まれながらに持っている正解最高のデバイス…指だ」

初代iPhoneを発表する際、故スティーブ・ジョブズ氏はそう述べたのだ。

ジョブズが定義した『指』という最高のポインティングデバイス。ジョブズが定義した『指』という最高のポインティングデバイス。

この最高のポインティングデバイスは『指』という理論、これはまったくそのとおりだと思う。

発表時に言っていた“紛失リスク”も当然あるはずがない。さらに、複雑な操作もなく直感的にポインティングが可能だ。これは10数年経過した今でも、その言葉は色褪せずに心に刻まれている。まさにジョブズに言ったとおり、指は最高のデバイスだったのだ。

ポインティングとしての指の限界

ところが、iPhone発売当初と異なり、現在ではスマホやタブレットをパソコンの代替として使うことが多くなった。つまり、より複雑で専門的な動作をユーザーである我々が求め始めたということだ。

——そこで訪れるたのが、“指の限界”という事実。

前述したように、ポインティングデバイスはマウスを始め、いくつかの種類が存在している。そして、スティーブ・ジョブズが提示した『指』という生まれながらのポインティングデバイス。

その両方と現在のスマホ・タブレットを照らし合わせた結果、指だけではすべての動作が賄えなくなったという現実だ。

iPad版Lightroom CC。iPad版Lightroom CC。

スマホやタブレットでコーディング作業を行い始めた。そして、LightroomやPhotoshopで画像編集。もちろん、各アプリはモバイル向けに最適化されている。しかし、『指』だけではポインティングデバイスとしては、もはや物足りなくなったのだ。そこで、新たにポインティングデバイスを考えなければならない時代が訪れた……そう私は思うわけである。

理想:キーボードを上手に落とし込む

理想:キーボードを上手に落とし込む

『指』というポインティングデバイスだけでは、スマホ・タブレットの機能をフルに活かすのが難しくなった。では、どうすればよいのだろうか。

  • マウスを復活させる
  • スマホにトラックポイントをつける

…なんとも前時代的だ。

そこで思いつくのが、キーボードをなんとかポインティングデバイスとして落とし込めないかということ案だ。

二条ねこ

マウスをスマホで使うと何だかチグハグって感じだし、キーボードならスマホやタブレットでも使うからねー。

まの

…なるほど。

デジタイザーペンは指の代替

そんなキーボードとポインティングデバイスを話す前に、先に『デジタイザーペン』について触れておきたい。

二条ねこ

デジタイザーペンこそ、スマホ新時代に“必須”なアイテムになっているぞーー!

Galaxy Note10とS Pen。Galaxy Note10とS Pen。

Samsung『Galaxy Note』シリーズに代表される、スマホにデジタイザーペンという組み合わせ。これが実に、現時点でのスマホのポインティングデバイスとして良い落とし所を見つけたデバイスだと思う。最新の『Galaxy Note10』に関しても、海外で軒並み高評価を得ている。つまり、デジタイザーペンがそれだけ市民権を得ているということだ。

初代iPhone発表時、スティーブ・ジョブズはデジタイザーペンを否定していた。これは“10数年前”においての正解であって、現代の正解ではないと思う。ここ数年でスマホやタブレットのスペック向上や、アプリの複雑&高機能化が著しい。そんな小型かつ高機能化な時代だからこそ、デジタイザーペンのような緻密で正確な“ダイレクトポインティング”が、今の時代だからこそ求められたのだ。だから、スティーブ・ジョブズが存命なら、デジタイザーペンを今の時代に否定するとは私は到底思えない。

話は逸れてしまったが、とどのつまり、『デジタイザーペン』は『指』の代替なのである。決してマウスやトラックポイントの代替ではない。それは初代iPhoneの発表イベントからも分かるはずだ。

つまり、これでは古来からのポインティングデバイスの呪縛(マウスが必須)という概念を崩しきれていないのだ。

二条ねこ

だって、明日からトラックパッドやマウスの代わりに、パソコンの全動作をデジタイザーペンでするってなったら、卒倒しちゃうよねー!?

砂瀧えり

た、たしかに大変そうやね……。

次世代のポインティングデバイスの例

そういうわけで、『デジタイザーペン』はポインティングデバイスの呪縛を解き放つものではなかった。どちらかといえば、指の延長線上的デバイスだろう。

……なので、次世代だと思えるポインティングデバイスを探してみました。

次世代のポインティングデバイス

  • Prestigio Click&Touch
  • Mokibo
  • Yoga Book C930
  • ZenBook Pro Duo

Prestigio Click&Touch

Clevetura tech intro - Clevetura Team

形として一番綺麗な次世代のポインティングデバイスと感じたのが、Cleveturaというベラルーシの企業の『Prestigio Click&Touch』というキーボード。

CleveturaImage:Clevetura

この『Prestigio Click&Touch』は、キーボードの表面84%がMacのトラックパッドのような感じのタッチサーフェスになっている。

キーボード1つで、3つの機能を持っている。キーボード1つで、3つの機能を持っている。

要するに、このPrestigio Click&Touchというのは、

  • Type:キーボードとしての主たる機能
  • Touch and Click:マウス的機能
  • Scroll:Magic Trackpad 2のような機能

の3つの機能を持っているキーボードということ。

元がキーボードなので、キーボードを機能を入れるのはいささか変ではあるが、公式サイトに則ってここではコアな機能としてカウントしている。

キーボードの表面がタッチパッドの一体になっているので、タイピングをしながらマウスカーソルの移動ができるというもの。これにより、マウスというものをレガシーなポインティングデバイスにでき、キーボードのホームポジションを崩さずに、タイピングとカーソル移動ができるのである。

二条ねこ

ねこちゃん的には、これが最適解な気がするぞー!
iPadのSmart Keyboardに組み込んでほしいな〜。

Mokibo

mokibo introduction main - Touchpad Embedded Keyboard : mokibo

この『Mokibo』というキーボードも、先程紹介したPrestigio Click&Touchと同様のベクトルを持っているポインティングデバイス。

調べてみると、こちらは韓国の企業Innopressoの製品のようだ。こちらは、クラウドファンディングサイトIndiegogoが購入可能だ。

Yoga Book C930

Lenovo's new Yoga Book: almost a laptop - The Verge

キーボードを画面に落とし込むという案では、Lenovoの『Yoga Book C930』も面白い。

Yoga Book C930はE Inkディスプレイにキーボードを表示しているので、『ソフトウェアキーボード』になる。なので、イメージ的にはスマホやタブレットのそれと同様だ。

ただのソフトウェアキーボードではない『Haloキーボード』。ただのソフトウェアキーボードではない『Haloキーボード』。

Yoga Book C930の次世代ポインティングデバイスと唸る部分は、E Inkにソフトウェアキーボードを表示していることではない。ソフトウェアキーボードに『Haloキーボード』という技術を用いて、ユーザーのキーボードの打ち癖を学習するところだ。

ソフトウェアキーボード最大の弱点は、キーボードを打った感触やフィードバックがないこと。それをどう落とし込むか…。それこそ、次世代のポインティングデバイスにおいての1つの課題になっているはずだ。

E Ink搭載でハードウェアポインティングデバイスとは一線を画する。E Ink搭載でハードウェアポインティングデバイスとは一線を画する。

次世代のポインティングデバイスを、前述したキーボードとトラックパッドの複合型のようなデバイスを『ハードウェア型』とする。すると、こちらは『ソフトウェア型』のポインティングデバイスと言えよう。

ソフトウェア型の次世代のポインティングデバイスは、当然だがサイズに制約がない。なので、スマホの場合、Appleが開発しiPhoneに採用されている『Taptic Engine』と組み合わせてポインティングを行う…というのが、ある種の解であり、伸びしろがあるのではないかと思う。

ZenBook Pro Duo

Asus ZenBook Pro Duo Review - The Tech Chap

ポインティングデバイスとは直接的に関係ないが、ある種の方向性を示したデバイスとして、ASUSの『ZenBook Pro Duo』を出しておきたい。

タッチ対応のディスプレイが、キーボード側の半分までせり出してきているのもそうだが、トラックパッドをテンキーとのコンビネーションにしてしまうところが、ポインティングデバイス論としては面白いところ。

パソコンとしてのムダを排除した結果の形。パソコンとしてのムダを排除した結果の形。

使い勝手がどうだ、という話はさておき、おそらくASUSがこのZenBook Pro Duoで表現したかったのは、ポインティングデバイスの選択肢を最大限に持たせ、ノートパソコンとしてのデットスペースを最小限にするというものではないか。ある種、チャレンジブルであり、ASUSが生み出した芸術的デバイスだと感じる。

現に、ZenBook Pro Duoは、

  • タッチパネル
  • デジタイザーペン
  • キーボード
  • トラックパッド

というポインティングデバイスの幅を持たせている。

これがポインティングデバイスの呪縛を解き放ち、次世代のスタンダードになるとは思えないが、このようなアグレッシブでかつ、ユーザーに使い方を提案できるスタイルを出してきたことに称賛を与えたいデバイスだと思う。

二条ねこ

ひょっとすると、次世代のポインティングデバイスを語る上で、いつかマイルストーンのような存在になっていたり…!?

結論:キーボードとトラックパッドは必要

結論:キーボードとトラックパッドは必要

こうやって、改めてポインティングデバイスについて考えてみると、やはりマウス(トラックパッド)とキーボードの呪縛からは、まだまだ逃れられないように感じる。

特にそう感じるのが、iPad Proを使っているときだ。
iPad ProはもはやモバイルOSの域を超えている。ハードウェアのスペックもそうだし、アプリケーションに関してもモバイルで簡易なものは少なくなってきている。だからこそ、「マウスがあれば…」と思ってしまうことが多々存在する。

確かに『指』というポインティングデバイスは便利だが、コーディング作業や画像編集を行う際に、指やApple Pencilのような“画面を射抜く”ポインティングデバイスだけだと心もとない。どうしても、マウスカーソルが欲しくなる。しかし、iPadにそのままマウスを移植してしまうと、それはそれで前時代的というか、チグハグな感じがする。そして、万人受けがしなくなってしまうだろう。

入力デバイス+ポインティングデバイス こそ最適解か。入力デバイス+ポインティングデバイス こそ最適解か。

なので、次世代のポインティングデバイスとしての個人的な最適解は、
入力デバイス+ポインティングデバイス
という複合型だと感じる。

入力デバイスであるキーボード(ソフトウェアでもハードウェアでも)に、トラックパッドの機能を落とし込む…それがもっとも綺麗な形な気がする。そうすれば、ライトユーザーはトラックパッドを使わずに、そのまま指でタッチすればようし、ハードユーザーはトラックパッドをガシガシ使えばよくなる。

二条ねこ

ここのキモは、ライトユーザーにはトラックパッドの存在を意識させないってことなんだよねー。

まの

それはまたどうしてですか?

二条ねこ

トラックパッドやマウスを意識させちゃうと、スマホやタブレットの“直感性”がスポイルされちゃうからね。それって、なんだかパソコン的で時代に逆行してる感じもしちゃうんだよねー。

砂瀧えり

ライトユーザーとハードユーザーが、お互いに意識せずに使いやすいってことがポイントなんやね?

二条ねこ

そゆことですな〜。

まとめ「新時代のポインティングデバイスは…何だ!?」

まとめ「新時代のポインティングデバイスは…何だ!?」

とどのつまり、『キーボード』と『マウス』というデバイスは偉大なものであり、その呪縛から我々はいまだに逃れられていないということだ。つまり、まだブレイクスルーは起きていない

『指』というポインティングデバイスは、確かに我々のポインティング論を変えたとは思う。ただ、すべてをひっくり返すぐらいのものではなく、現行のポインティングデバイスに+αする感じであった。

……さて、新時代のポインティングデバイスは何が来るだろうか。それが楽しみだ。

二条ねこ

やっぱ、キーボードにトラックパッドを組み込むコンビネーションが最適解かもっ!?

この記事で紹介したガジェット

おまけ

まの

語りましたね。

二条ねこ

まだまだ、思ってることはいっぱいあるんだけどねー!

砂瀧えり

うーん、もうお腹いっぱいかな?

二条ねこ

ええー!?
朝までねこテレビ(?)でもしようよ〜。

おわり