- 窒化ガリウムの構造について迫る!
- 汎用的なUSB充電器に最適な半導体だった!
- 今後はシリコン半導体に置き換わるかも!
次世代の半導体だ!
最近、『窒化ガリウム』という言葉を、USB充電器やACアダプターとセットで耳にすることが多い。この突然現れた窒化ガリウム。これって…USB Type-Cと大いに関係しているのでは?
その答えは、窒化ガリウムの性質を知ると分かってくるかもしれません。
そもそも『窒化ガリウム』がピンとこないんやけど…。
学術ですな〜。
Contents
次世代の充電器のキーワード『GaN』
ガジェット系に精通している人なら、最近よく耳にする『窒化ガリウム』や『GaN』という言葉。
おそらく、この言葉はUSB充電器やACアダプターとセットで聞くことが多いのではないのかと推測します。つまり、それくらい充電器に使われ始めているということ。メーカーによっては“次世代”の充電器なんて謳われています。
……でも、どう凄いのか実感が湧かない人も多いのでは?
エモい充電器ってことは分かるけど、ピンとこない人多そうだよねー。
ですよね。
ということなので、まずは窒化ガリウムそのものについて知って、その上で“なぜ次世代なのか”を紐解いていきます。
窒化ガリウム(GaN)について
窒化ガリウム(GaN)とは?
そもそも『窒化ガリウム』とは、文字どおり『窒素(N)』と『ガリウム(Ga)』を組み合わせた化合物です。化学式は『GaN』。『Gallium nitride』とも呼ばれます。
この窒化ガリウム自体は結晶構造を持っていて、『化合物半導体』という半導体の一種だったりします。イメージとしては、食塩(NaCl)の結晶みたいな感じ。とにかく、窒化ガリウムの正体は半導体ということです。
余談ですが、シリコンウエーハで有名な『ケイ素(Si)』は単元素半導体だったりします。
窒化ガリウムの結晶構造
窒化ガリウムは六方晶型の結晶構造になっていて、上画像のようなイメージです。このような結晶構造を『ウルツ鉱型構造』と呼びます。
同じく半導体仲間である、
- シリコン(Si):ダイヤモンド型構造
- 砒化ガリウム(GaAs):閃亜鉛鉱型構造
はこんな感じの結晶構造になっています。
結晶構造は私も深掘りできないので、こういう結晶構造ぐらい…で収めてもらえればです。
窒化ガリウムの製造方法
窒化ガリウムで半導体を作るには、主に『Naフラックス法』という製造方法を用いられるようです。
製造方法の流れとしては、液体状態のGaとNを反応させて結晶(バルク結晶)を作る、添加剤としてNaを加え、温度にムラがないようにしながら圧をかけて混合させるという感じです。
窒化ガリウム自体は10年以上前から注目されていたようですが、シリコン半導体に比べて製造方法が難しく、かつ製造コストも高かったので、今日までユーザーが目にする機会が少なかったというわけだそう。
歩留まりがさらに高くなったら、完全にシリコン半導体の代替になるかもしれませんね。
窒化ガリウムについてこれ以上語るのは畏れ多いので、詳しくは窒化ガリウムの第一人者であるノーベル物理学賞受賞者の天野浩・赤﨑勇両氏の書籍を読んでください。
SiからGaNに変わるメリット
なぜここまでして窒化ガリウムが作られ、USB充電器やACアダプターに使われているかというと、現在の主流であるシリコン半導体(Si)より優れているからでしょう。
窒化ガリウムのメリット
- 高効率:バンドギャップが広い
- 高耐久性:絶縁破壊電圧が高い
上記の2点が従来のシリコン半導体よりも優れている部分になってます。これを知っていくと、どうしてUSB充電器やACアダプターに使われるかの理由に近づけるわけです。
分かったような…分からないような……!?
高効率:バンドギャップが広いと伝導率が向上
窒化ガリウム(GaN)はシリコン(Si)に比べて、バンドギャップが広いというメリットがあります。ちなみに、このようなバンドギャップが広い半導体のことを、『ワイドバンドギャップ半導体』と呼びます。
シリコン(Si)の1.12eVに対し、窒化ガリウム(GaN)は3.42eVと約3倍バンドギャップ広いので原子間の結合力が高くなり、低損失・高速スイッチング・高温動作が実現できます。なので、シリコン(Si)に比べて、より小面積で強いパワーを発揮できるということになります。
この『バンドギャップ』は、電子が伝導帯に遷移するために必要なエネルギーのことで、この『eV』は『電子ボルト』という単位のことですわ。
高耐久性:絶縁破壊電圧が高いので高耐久
また、窒化ガリウム(GaN)はシリコン(Si)に比べて、絶縁破壊電圧が高いというメリットがあります。
シリコン(Si)の0.3MV/cmに対し、窒化ガリウム(GaN)は3.0MV/cmと約10倍絶縁破壊電圧が高くなっています。より耐久性が向上しているということになります。
『絶縁破壊電圧』は、導体間を隔離している絶縁体が破壊されて絶縁状態が保たれなくなったときに導体間にかかる電圧のことですわ。
うーん…結局どゆことー!?
従来のシリコン半導体に比べて、より小さくてもパワフルになって壊れにくくなったということですね。
GaNとUSB-Cと100W
シリコン半導体よりも高効率・高耐久性に優れている窒化ガリウムが、なぜUSB充電器やACアダプターに使われるようになったかは、おそらく『USB Type-C』と『USB PD』が起因しているはず。
最近はスマホ・タブレットはもちろん、PCですらUSBで充電ができる時代。そうなってくると、今まで各社バラバラだったACアダプターが『USB Type-C』というひとつの規格に統一・準拠しないといけなくなります。特に、PCを充電するには、高電圧でないといけないので『USB PD』という技術が必要になってくるわけです。
だからこそ、窒化ガリウム搭載のUSB充電器が必要になってくるわけやね!
そういうことですね。
…!?(どゆことだー?)
今までのACアダプターがバラバラの状況とは異なり、MacBookにしてもXPSにしても『USB PD』という充電規格に準拠するようになりました。しかし、PCによって充電に必要な電力はバラバラ。
そこで困るのが、MacBookは充電できるけど、XPSは充電できないという現象。それを回避するには、USB充電器自体の供給可能電力を上げないといけません。USB PDは規格上100Wが最高なので、可能であれば100Wにすべきということです。(XPS 15 2-in-1はUSB PDの規格超えしてしまっている)
しかし、従来の半導体だと100W級のACアダプターは、まさに“レンガ”の如し。大は小を兼ねるが、レンガ充電器でMacBookを充電するというのは…なかなかにチグハグ。なので、充電器そのものを小型化する必要があるわけです。当然、供給可能な電力は高いままの状態でです。
だからこそ、大は小を兼ねつつ小型である汎用的なUSB充電器に、今回の『窒化ガリウム』が使わているということでしょう。やっと繋がりました。
窒化ガリウム搭載USB充電器
それでは、最後にそんな素敵な窒化ガリウム搭載のUSB充電器を、紹介して終わりとしたいと思います。
Anker PowerPort Atom PD 1
Anker『Anker PowerPort Atom PD 1』は、USB PD対応で最大30W出力に対応。
RP-PC104
RAVPower『RP-PC104』は、USB PD対応で最大45W出力に対応。
この『RP-PC104』は、以前の8vividでレビュー済みだよー!
まとめ「充電器もそれ以外も『GaN』が今後主流の半導体に!」
従来のシリコン半導体(Si)に比べて、高効率・高耐久性な窒化ガリウム(GaN)は、おそらく今後主流になる半導体の素材になるでしょう。
このコンパクトでかつ高出力という夢のような半導体は、より汎用性を求められたノートPCの充電に最適。だからこそ、USB PDに対応したUSB充電器に積極的に使われようとしているということです。
つまり、窒化ガリウムは凄い!
ゲルマニウム、シリコンと来て、次は窒化ガリウムになりそうです。
この記事で紹介したガジェット
おまけ
トランジスタ時代が懐かしくなるくらい、進化は凄いよね〜♪
今回の窒化ガリウムの実用化で、ムーアの法則どおりに今後も進みそうですね。
デミ・ムーア?
ライアン・ムーア?
トレイ・ムーア?
いえ、ゴードン・ムーアです…。
そのボケ、伝わらないでしょ。
おわり
Reference:窒化物半導体の展開, 高温高圧技術が拡げる 次世代半導体の世界, 窒化ガリウム系結晶の開発, ワイドバンドギャップ半導体とは - 東芝